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私がフィンランドの大学院に合格するまで②|海外大学院から専攻を変えるのは可能か?

前回の記事では(とは言ってももう2年前になりますが)、私がフィンランドの大学院を受験した道のりでの葛藤やら希望やらを書きました。その記事を書いたのは2年前でフィンランドに行く前だったのですが、この記事を書いている現在は、既にフィンランドの大学院を正式に修了し、スイスの博士課程で研究を続けています。

時々海外大学院を受験したい人に質問を受けるので、今回は実際に私が海外大学院から専門を変えた経緯や実現可能性、そして専門分野の変更を経て今私が感じていること等を(3年前を振り返って)書いていきます。

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Intro:どうしても「海外」の大学院に行きたかった理由

前回の記事で少し触れましたが、大学5年生くらいになって病院実習が本格化してきたあたりから私は人生にすごく迷ってました。そもそも高校生の時に旧帝大の医療系の学部に行けたら何でもいいくらいのモチベーションで入学し、歯学という学問にもあまり興味を持てず何より病院実習などで私がそこまで器用でもなく歯科医師として働くことに情熱がこれっぽっちもないことに早々に気づいていたからでした。(実際は研修医として卒業後少しだけ口腔外科で働けたのはとても良い経験でしたが今後何十年もそこには居られなかったでしょう。)

また、医療業界や病院という世界やコミュニティーはひどく狭く、外への広がりが閉ざされているような、どんどん自分の人生が一つの場所や生き方、従来の決まりきったレール上に固定されていっているような感覚がありました。その、閉塞的な日本や病院の閉じ切った場所で自分の人生を終えたくなくて、そこから逃げ出したくて、もっと広い世界で自由に生きたいと決意したのが、海外にとりあえず行きたかった理由です。また、日本の強い同調圧力や社会構造的に維持され続けている男尊女卑も、その日本脱出の決意に拍車をかけました。

日本の外で生きると決めた時に一番懸念したのは、ではどうやって?ということでした。そこで一番確実そうなのは、現地で学位をとって語学力と新たな専門性とそこでの人との繋がりを持つことだろうと考えました。また、高校生の時の学部選びで主体的な選択をすることができず大学での学問を楽しめなかった私は、今度こそ自分が本当に興味のある学問を学び将来に繋げたいと願ってのことでした。

歯学からの専攻チェンジ:神経科学を選んだ理由

高校生の時は自分が何が好きかも分からない(そもそも自分がやりたいことなど考えたこともない)状態でしたが、大学在学中に自分の興味の赴くままに様々な課外活動をして沢山の人と出会う中で、徐々に私は人間の心や人間関係、メンタルヘルスに強い関心があることがわかってきました。(自分の行きたい方向を定めるのには無茶苦茶苦労しました。)

また病院実習でも研修医時代にお世話になる口腔内科外来に来る患者さんの中で、「心身性疾患」と呼ばれる「脳・神経系の何かしらの異常」によって引き起こされる身体の症状(一見検査上では正常に見えるが、顔面口腔内に生じる痛みや違和感、異常感)にも興味を持ちました。そこで、心理学や神経科学などをカバーする学際領域に踏み込むことに決めました。

専攻を変える際の苦労

1番に苦労したのは何と言っても、大学院探しでした。というのも、全然違うバックグラウンドを持つ私にでも受験資格のある大学がほとんどなかったからです。そもそも大学院は、学部で学んだ事をベースにさらに応用を深め研究する場所なので当たり前なのですが、OOという単位を取得していること、OO学部出身であることなどの受験要件を満たす必要があり、違う学問を勉強してきた私はそもそも論外でした。毎日舐めるようにHPを見て探していましたが、結局受験できたのはイギリスとフィンランドの数カ所だけでした。

(ただ、HPを見て自分が例え要件を満たしていなくても、自分の大学の成績や受講科目などを添付した上で、大学側に「こういうバックグラウンド出身だが、自分は受験する資格はあるか?」と問い合わせることをお勧めします。かなりの確率で丁寧な返信がもらえます。)

また日本の奨学金を獲得するのにも、専攻を変えて臨むというのはハードルの高い事でした。大学院を目指す殆どの人は(当たり前のことですが)大学学部時代に取得した単位があり、その分野内で修論を書き研究成果を残しているので、新たな分野に飛び込む時点でその分野内での知識や研究実績のない私は惨敗でした。それに奨学金申請のための研究計画書を書くのにも、指導教官もいない、自分の知らない分野で研究計画を立てるというのも厳しい話で、相当に苦労しました。結局、研究に拘っていなさそうなIELTS奨学金とフィンランドの大学院から合格と同時に頂いた奨学金で何とかなりましたが、勝ち目のない日本の奨学金に応募しては不合格通知をもらっている時はメンタルがやられそうでした(実際やられましたw。)

また、私は大胆なので無謀そうでも日本を飛び出す決意をしていましたが、その反面、保守的で海外を知らない両親に話した場合、応援してもらえるどころか大反対されることが目に見えていたので、実際に合格し奨学金をもらえるまで大学院受験のことは家族には固く秘密にしていました。(彼らはきっと私が真面目に国家試験の勉強をしていると思っていたはずです。まぁ結果として合格して免許は貰えたので良いでしょう)。

そんな家族にも言えない挑戦をしている中で、自分の選んだ道は本当に正しかったのだろうか、途中で専門を変えるなんて果たして可能なのだろうかと、と自問自答することも多くしんどかったです。いやぁ、今振り返ってもあれはしんどかった。

私なりの志望動機書(Motivation letter/Statement of purpose:SOP)のTips

私は学部の成績が芳しくなく、新しく始める専攻分野の知識もない、また研究実績もない、のナイナイ尽くしでしたが、海外の大学院受験では志望動機書(以下SOP)が重視されるところも多いので、SOPには力を入れました。インターネットを見れば、SOPのテンプレートや見本が転がっているのですが、専攻を変えた人の文章は中々載っておらず、XPLANEのメンターの方の助けを元に何とか自分で仕上げました。

メンターの方から貰ったアドバイスのうちの一つは、「全部100%真実でなくても良いから、学部での勉強や経験が、どのように心理学・神経科学に繋がっているのか一貫性のあるストーリーで説明すること」でした。例えば私が学部の勉強に触れず、ただ人生経験から人間関係を学べる心理学に興味があるとしか言わなかったら、大学側に、この人のこれまでの勉強は何だったのか、気まぐれで心理学を勉強しても直ぐにまた専攻を変えるかも、アカデミックに真剣ではない、と思われるリスクがあるかもしれないからということでした。(実際は分かりませんが…)

私は日本の病院で一生勤務したくなくて仕事を変える気満々でしたが、モチベーションレターには一貫性のある医療関連のキャリアストーリーを書きました。(モチベーションレターの内容と自分の本心が一緒だと書きやすいし一番理想ですが、そうでなくてもそれっぽく書くことが出来れば良いのかもしれません。)

当時の私は将来をイメージするのが本当に難しかったのですが、将来像や卒後どう心理学・神経科学の学びを活かした仕事をするのか明記することもアドバイスされました。将来のことなんて誰も分からないし、入学さえすればSOPなんて誰も気にしないので、「卒後の将来像」はもう頭を捻って生み出すしかない気がします。

実際に変更しての苦労

私が進学したフィンランドの神経科学の修士プログラムは学際的で、神経科学と一口に言っても心理学から臨床の脳神経外科まで幅広く学ぶことができました。実際に私でも受験資格があったくらいなので、クラスメイトのバックグラウンドも幅広く、生物・細胞学から心理学、AIやCS、言語学まで様々な学問をしてきた人がいました。なので、私だけが特に授業に着いていくのに苦労するということはなく、むしろ基礎生物学や基礎医学などは学部でもしっかりやっていたので楽な部分もありました。

なので、専攻を変更したことによる苦労、というのはあまり感じませんでした。むしろ私が苦労したのは、英語でしっかりと議論する能力や、積極性、クリティカルシンキング、プログラミングや統計学など別のところで、私が日本の大学で身に付けていなかったものをヨーロッパ系の大学生は在学中にしっかりと身に付けているようで、そこでの差はすごく感じたし焦りました。(この話もまたどこかでしたいと思います。)

また神経科学のマスターを修了した後にキャリアをどうしようというのは世界共通でみんな悩んでいたので、孤独感はありませんでした。実際クラスメイトにも専攻を大なり小なり変えた人もいたので、軌道修正してよかったなと感じました。現在、クラスメイトはそれぞれのスキルやバックグラウンドを生かしながら次の道を進んでいるようなので、将来どうなるのかが楽しみです。

現在、自分の進路・キャリアを振り返って

海外大学院に行くと決めたのは、もう3年以上も前のことになりますが、振り返ってみて「当時の挑戦は無謀だったかもしれないし、心底苦しかったけど、自分の意志を貫くことができたからこそ今自分は今の場所にいる」と考えるとあの時諦めなくてよかったと思います。

また、神経科学という分野で修士課程を取得したことによって、新しく入った分野でも全体像が掴めるようになったし、入学前では絶対に開けなかった道が卒業前には開けているのを感じました。今後PhDを終えてどう感じるのかはまだ分かりませんが、現在は自分の興味のある分野に留まれることの幸せとありがたみを感じています。

二度目の大学でも、大学院からでももっと自分に興味のある専門に変更したいという方は、自分の挑戦できる限り挑戦してみても良いのかなと思います。この記事を読んでくださった方が、後悔のないチャレンジをできますように。


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この記事を書いた人

フィンランドで修士号取得(MSc), スイス大学院の博士課程在籍中。専攻は神経科学。興味は人間の脳とこころ, フェミニズム, アート, 言語学習。

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